対話が人を育て、世代をつなぐ ― 外国にルーツをもつ児童と、日本で活躍する青年との出逢いから

中学生になったFさんの問い

中学2年生のFさんから、キャリア教育の授業を振り返る感想文が届きました。

そこに書かれていたのは、進路や日本語の学びについて、
「なぜ学ぶのか」「何のために試験を受けるのか」を考え始めた自分自身の姿でした。 小学校を卒業する頃には見られなかったその問いに、学びは人との関係の中で育っていくのだということを、あらためて感じました。

日本で働く青年Aさんの歩み

今回、講師として参加してくれたのは、日本で働く外国籍の青年Aさんです。
現在は入社3年目。海外マーケットに関わる業務を任され、日々経験を積んでいます。

Aさんとは、大学4年生のときにキャリア相談で関わりました。
大学での学びやゼミでの活動を振り返る中で、自分が大切にしてきた視点や強みを整理し、それをどのような仕事につなげていくかを一緒に考えました。

その後、Aさんは自ら企業を探し、希望していた大手菓子メーカーへの就職を決めました。
今回の授業に向けた事前準備や、当日の落ち着いた語り口からは、 職場で積み重ねてきた経験と、仕事への向き合い方が自然に伝わってきました。

「先生」と呼ばれた経験

授業終了後、Aさんは「初めて“先生”と呼ばれました」と感想を伝えてくれました。

自分のこれまでの経験が、誰かのこれからを考える材料になる。 語る側に立ったことで、これまで歩んできた道のりを、あらためて肯定的に振り返る時間になったのではないかと思います。

成長を支えていた共通点

児童Fさんと、青年Aさん。年齢も立場も異なる二人の成長に、共通していたものがあります。
それは、自分の話を受けとめ、問い返してくれる「誰か」の存在でした。

Fさんにとっては、小学校・中学校を通じて関わり続けてきたumi(国際室)担任の教諭。
Aさんにとっては、大学での学びの場や、職場で出会った上司や先輩たち。 いずれも、自分の言葉に耳を傾け、「どう考えているのか」を問いかけてくれる大人の存在がありました。

聞いてくれる人がいるということ

人は、年齢に関係なく、話を聞いてくれる人がいることで、 自分自身を理解し、次の一歩を考え始めるのだと感じます。

教育とキャリア、そして定着はつながっている

こうした関係性の大切さは、学校現場だけの話ではありません。
私が日頃支援している高度外国人材の定着においても、同じことが言えます。

職場の中でロールモデルが見えること。
自分の考えを言葉にし、受け止めてもらえる環境があること。
そして、仕事だけでなく、生活や家族も含めて「この社会で生きていける」と感じられること。

子どもが安心して学び、将来を思い描ける環境があるかどうかは、
その家族が日本で働き続けるか、定着していくかにも深く関わっています。

教育とキャリアは、決して分断されたものではありません。

職場の外も含めて、定着を考える

だからこそ私は、高度外国人材の定着を、
職場の中だけで完結するものとして捉えていません。

教育、対話、世代を越えたつながり。
そうした接続の中で、人は少しずつ自分の立ち位置を見つけ、
この社会との関係を築いていくのだと思います。

今回のキャリア教育の場は、
外国にルーツをもつ児童と、日本で働く青年、
それを支える大人たちが出会い、つながる時間でした。

こうした一つひとつの積み重ねが、
次の世代と、その先の社会へとつながっていくことを願っています。


◆ 本取り組みは、沼津市立今沢中学校におけるキャリア教育の一環として実施されました。 実施にあたっては、同校並びに沼津市立今沢小学校 umi (国際室)主任の生田佳澄教諭と連携し、企画・調整を行いながら進められたものです。